動悸とは、心臓の拍動を異常に強く意識して感じる症状です。それには、心臓の拍動の状態に病的な変化が起こって、それを動悸と感じる場合と、心臓の拍動そのものにはなんらの異常もないのに、神経質のためにふつうの拍動を強く意識しすぎて、動悸と感じる場合とがあります。心臓の拍動に異常が起きれば、それは脈拍の異常としてあらわれます。心臓の拍動が正常であれば、脈拍もまた正常です。
ところで、心臓の拍動の変化とはどういうことでしょうか。ひと口で言えば、それは心臓の拍動の速度、リズム、大きさに変化のあらわれることです。心臓の拍動の速度と大きさは、全身がそのときどきに必要とするエネルギーの総量によって決まるのです。エネルギーを作り出すためには、それに相当した酸素が必要です。その酸素の配給を引き受けているのが動脈血です。ですから、からだが必要とするエネルギーの総和から、それに必要な単位時間内に、全身に向かって拍出しなければならない動脈血の分量も決まるわけです。したがって、全身のエネルギーの使い方が増えれば、それに応じて心臓は血脈の拍出量を増やさなければなりません。それには、心臓は拍動の速度を早くするか、毎回の拍出量を多くするか(あるいは両方)をしなければなりません。
全身のエネルギーの使い方は、時々刻々変化しています。それは、からだの各部分部分でも違います。それに応じて、心臓はちょうどそれに見合う分量の血液を打ち出します。ですから、当然、心臓が打ち出す血液の分量は、全身の要求に応じて絶えず変化していますし、からだの中での血液の配分の仕方もいろいろに変化しています。それらの調節は、からだの内部での情報伝達と制御との絶妙な相互作用によって、みごとに行われます。全身のエネルギーの使い方が大きくなれば、心臓の拍動が速く大きくなることは、日常誰でも経験することです。マラソンをしたり、階段を駆けあっがったりしたとき、心臓が激しく鼓動します。これは、エネルギー消費の急激な増大がすぐさま心臓の拍出量の増大を引き起こすことの日常的、生理的な例です。
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